この記事の要点
- AIエージェントは、目的を伝えると、手順を自分で考え、検索やファイル、業務システムなどの道具を使いながら作業を進めるAIです。1回ずつ答えを返すチャット型の生成AIとは、ここが違います。
- 中小企業で任せやすいのは、定型の情報収集・整理・入力のように、手順が決まっていて、結果を人があとから確かめられる仕事です。
- 任せるときは、権限を必要な分だけにする、重要な操作の前に人が確認する、記録を残す、の3つを守ります。浜松市は令和8年度に導入費用の補助金を実施しました(来年度の実施は未定です)。
AIエージェントとは
AIエージェントとは、目的を伝えられると、その達成に向けて自分で手順を考え、道具を使いながら作業を進めるAIの仕組みです。浜松市の補助金では、「ユーザーからの指示に基づき、自律的に問題解決やタスク実行を行うソフトウェア」と定めています。
ここでいう道具とは、ウェブ検索、ファイルの読み書き、メールやカレンダー、社内の業務システムなどです。AIは作業の途中で結果を見ながら、次に何をするかを決めていきます。
AIの開発会社の Anthropic は、AIと道具をあらかじめ決めた手順どおりにつなぐ仕組み(ワークフロー)と、AI自身が手順や道具の使い方を決めながら進める仕組み(エージェント)を分けて考えています。そして、まずは単純な方法で足りないかを考え、必要なときだけエージェントを使うよう勧めています。毎回同じ手順で進む仕事なら、決まった手順の自動化で十分なこともあります。
チャット型の生成AIとの違い
| 比べる点 | チャット型の生成AI | AIエージェント |
|---|---|---|
| 頼み方 | 1回ごとに質問や指示を出す | 目的を伝え、手順は任せる |
| 進め方 | 1往復で答えを返す | 手順を考え、作業と確認をくり返す |
| 使うもの | 主に会話の中の文章 | 検索・ファイル・メール・業務システムなどの道具 |
| できあがるもの | 答えの文章(使うのは人) | 調べた結果の一覧、入力の下書き、作ったファイルなど |
| 人の役割 | 毎回読んで、自分で使う | 任せる範囲を決め、要所で確認する |
| 気をつけること | 誤りをそのまま使わない | 誤った操作が続けて起きることがある。権限・確認・記録が要る |
チャット型では、AIの誤りは「文章の誤り」で止まります。エージェントでは、誤りが「操作の誤り」になり、次の作業に引き継がれていきます。Anthropic も、エージェントは費用がかさみやすく、誤りが積み重なるおそれがあると注意しています。
中小企業で任せやすい仕事
任せやすいのは、次の3つがそろう仕事です。
- 手順が決まっていて、言葉で説明できる
- 結果を人があとから確かめやすい
- 間違えても、取り返しがつく
浜松市の補助金も、定例業務や情報収集・分析などの効率化を、対象の事業としていました。たとえば、次のような仕事です。
| 仕事 | AIエージェントに任せること | 人がすること |
|---|---|---|
| 情報収集 | 業界のニュースや公的機関の公募情報を定期的に調べ、一覧にまとめる | 一覧を見て、動くかどうかを決める |
| 問い合わせの整理 | 届いた問い合わせを内容で分け、返信の下書きを作る | 下書きを確かめて送る |
| 書類の読み取りと入力 | 注文書や請求書の中身を読み取り、入力の下書きを作る | 下書きを確かめて登録する |
| 報告書の下準備 | 社内の資料やデータを集め、たたき台を作る | 中身を確かめて仕上げる |
反対に、支払い・送金、契約、社外への送信や公開を、人の確認なしに任せるのは避けます。判断の基準が文書になっていない仕事も、まだ任せる段階ではありません。
任せるときの注意:権限・確認・記録
ソフトウェアの安全性について指針をまとめている非営利団体の OWASP は、AIに必要以上の機能・権限・自律性を与えることを、生成AIを使ったシステムの主な危険の1つに挙げています。守ることは、次の3つです。
権限を与えすぎない
AIが使える道具と権限は、その仕事に必要な分だけにします。読むだけで足りる仕事に、書き込みや削除の権限は与えません。AI用のアカウントを分けておくと、あとで何をしたかも追いやすくなります。
重要な操作の前に、人が確認する
送信・削除・支払い・発注のように取り消しにくい操作は、実行の前に人の承認を挟みます。既製のサービスにも、そのための設定があります(2026年9月時点)。
- Claude は、Gmail とつないだときのメールの送信・返信・転送の前に、既定で毎回、利用者の承認を求めます。法人向けプランでは、確認を省いてよいかを管理者が決めます。
- ChatGPT の法人向けプランでは、つないだアプリについて、「毎回確認する」「読むのは確認なし、変更の前には確認する」などの設定を管理者が選べます。
- Microsoft Copilot では、組織で使えるエージェントを管理者が選べます。
記録を残し、外から来た指示に気をつける
AIが何を読み、何をしたかの記録(ログ)を残し、定期的に見返します。エージェントは、読み込んだウェブページやメールの中に紛れ込んだ「AIへの指示」に従ってしまうことがあります(プロンプトインジェクションと呼ばれる攻撃)。記録があれば、おかしな動きに気づき、原因を追えます。
小さく始める手順
- 仕事を1つ選び、今の手順を書き出す:誰が、何を見て、何を決め、どこに入力しているかを文章にします。
- 決まった手順の自動化で足りないか考える:手順が毎回同じなら、エージェントでなくても自動化できることがあります。
- 「読むだけ」「下書きまで」で試す:送信や登録は人が行い、AIには下書きまでを任せます。本番のデータと切り離した環境で試せると安心です。
- 2〜4週間、記録と手直しの量を見る:どんなミスが、どのくらい起きるかを確かめます。
- 任せる範囲を少しずつ広げる:問題が少なければ、確認を挟む場所は残したまま、任せる作業を増やします。
任せる前に、次の点を確かめておきます。そのままチェックリストとして使えます。
□ 任せる仕事の手順と、終わったときの状態を文章にした
□ AIが使ってよい道具(システム・フォルダ・アカウント)を決めた
□ 読むだけで足りる所に、書き込みや削除の権限を与えていない
□ 送信・削除・支払い・発注の前に、人が確認する
□ 何を読み、何をしたかの記録が残る
□ 止め方と、元に戻す方法を決めた
□ AIに渡してよい情報の範囲を、社内ルールで決めた
小さく試して広げる進め方は、中小企業の生成AI導入の進め方でも紹介しています。AIに渡してよい情報の決め方は、生成AIの社内ルールの作り方をご覧ください。
浜松市のAIエージェント導入の補助金
浜松市は令和8年度に、「中小事業者等AIエージェント導入支援事業費補助金」を実施しました。概要は次のとおりです。
| 項目 | 令和8年度の内容 |
|---|---|
| 対象 | 浜松市内に主たる事業所などがある中小事業者 |
| 対象の事業 | AIエージェントを導入し、定例業務や情報収集・分析などを効率化する事業 |
| 補助額 | 対象経費の2分の1以内(上限500万円、下限50万円) |
| 対象経費の例 | AIエージェントのライセンス・初期費用、設定やカスタマイズ、既存システムとの連携改修、導入支援や要件定義などのコンサルティング |
| 募集 | 3次募集まで行われ、3次募集の受付は2026年9月30日まででした |
来年度も実施されるかは未定です。最新の情報や細かな条件は、必ず浜松市の公式ページで確かめてください。
対象経費に要件定義や既存システムとの連携改修が含まれていたことからも分かるように、AIエージェントの導入では、「何を任せ、どこで人が確かめるか」を決めることと、社内のシステムとつなぐことが中心になります。任せたい仕事と今の手順を書き出しておくと、同じような制度が出たときにもすぐに動けます。
まとめ
- AIエージェントは、目的を伝えると手順を考え、道具を使って作業を進めるAIです。便利な分、任せ方の設計が大切です。
- 任せやすいのは、手順が決まっていて、結果を人が確かめやすい仕事です。まずは「読むだけ」「下書きまで」で試します。
- 権限は必要な分だけ、重要な操作の前には人の確認、記録を残す。この3つを最初に決めます。
当社では、AIエージェントに任せる仕事の洗い出しや要件定義から、既存システムとの連携の開発、社内ルールづくりまでお手伝いしています。「どの仕事なら任せられるか知りたい」という段階から、お気軽にご相談ください。詳しくはAI活用支援のページをご覧ください。